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「最近、あの二人、よく一緒にいるよね?」
隣の席の津田あかりが、兎月に耳打ちして来た。次の時間の予習と、教科書を開いていた兎月は、津田が指差すベランダを振り向いた。竜也と聖が何か話合っているようだ。
「っていうかさ、空知くんのいきなりのイメチェンには、ビックリしたよねー」
津田の前の席に座り、彼女と向かい合っている乾麻里が、彼らを見ながら、話し始める。
「ねー、『そんな人いた?』って位、存在薄かったのにね。ある日、髪を切って来たら、超イケメンって、ウケるよ。どこの学園ドラマだって思ったもん」
津田が笑い声を上げるのを、兎月はドキドキしながら、聞き耳を立てた。これは、悪口ではないよね? 髪を切って少しは良かったのかな?
「葛西もさ、最近、空知くんと仲イイよね。もしかして、最初から彼がイケメンだって気付いてた?」
兎月は声を出さずに首を横に振った。それにしても、女の子ってよく喋るな。彼女たちの甲高い笑い声を聞くと、何だか疲れてしまう。ずっと、一人でいることに慣れていた兎月は、友達との距離感が掴めずにいた。葛西さんが自分に戻った時に、違和感がないようにしないと、兎月は聖を演じて、作り笑いを浮かべた。
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