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「あ、今思ったけど、だから鷲尾、空知くんに忠告してるんじゃない? 聖に手を出すなよ、俺が目を付けてるだからなって」
「その妄想、いいね、ドキドキする」
「あの、鷲尾くんがボクのこと好きだって、二人とも気付いていたの?」
キャーと騒ぎ出した彼女たちの発言に、思わず訊ねる。
「何言ってるの、バレバレでしょうが。いつも葛西のこと見てるし。むしろ、葛西、やっと自覚したの? あんた、いつも、『アイツは僕の弱みを握ろうとしてるだけだ』って、頑なに言い切ってたから、うちらもちょっと、鷲尾が可哀想だと思ってたんだよ」
「鷲尾もよく見ると、カワイイ顔してるよね。子犬系というか」
「まあ、性格明るくて、友達も多いけど、何か残念なんだよねぇー」
「解る。てか、だったら、ちょっと影のある空知くんのがよくない?」
「だねー」
二人のお喋りを流しながら、兎月は窓の外に視線を投げる。聖も竜也も楽しそうに笑っていた。笑っているのは、自分だったけれど、ボクはあんな風に、声を上げて笑ったことがないな。なぜか胸の奥がちくりと痛んだ。
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