仰げば尊し

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「アパートでなく、思いきって一戸建てを借りた。部屋はたくさんあるし、庭も結構広いぞ。バラを植えておいた。お前も、何か好きなものを植えるといい」 「マモル、まさか」  こほん、と改まってひとつ咳をすると、衛はやけに緊張した表情でこう言った。 「一緒に暮らさないか、俺と」 「マモル……」  黙って、その胸に飛び込んだ。言葉はなくとも、返事の代わりには充分だった。 「マモル、好き! やっぱり大好き!」  あぁ、そして始まりは、またここから。  今度は新しいソファに身を沈め、二人はこれから始まる新しい世界への扉をひとつ、開き始めた。  あの時より少しだけ眩しい、春の日の事だった。
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