2/2
前へ
/4ページ
次へ
12/31 PM17:30 最後の晩ごはんを考える。いつもはアパートから一番近いスーパーで値引きになった惣菜を買う。 金を使うのも今日が最後なんだから、今日は値引きされていないやつにしよう。少しでも美味しいと思えるものがいい。 迷ったが唐揚げとメンチカツ、それにビールを買った。酒を買うのも発泡酒が主だったが今日は高めのビールにした。最高の贅沢だ。 贅沢の定義は人によって違うが、感覚は簡単だ。俺のようなスーパーの惣菜にビールでも贅沢だと感じるし、ボーナスが入ったから買えるブランド品のバッグを買った時も贅沢だと思うだろう。 贅沢は幸せともいえる。だから俺は今日、この日終わることが最高の贅沢で、幸せなのだ。 12/31 PM9:00 テレビを付け適当にチャンネルを変えて流行りのタレントや歌手を見た。興味はなかったが俺が消える時にいたやつを知っておきたかった。ああ、こんなやつもいるのかと。誰でもよかった。一通りチャンネルを変えて消した。 そろそろ終わる場所へ向かう。外はすっかり冷え込んでいて指が悴む。ただその痛さも心地よかった。 昔から遊園地が好きだった。30も過ぎれば行くことなんてないがテーマパークのCMを見ると行きたいと思っていたし、今から行く遊園地も子どもの頃も行ったし元カノと行ったこともある。 遊園地のゲートを入れば違う俺になることが出来た。全てが許され、リセットされた気になった。普段は目にすることもないアトラクションの数々が別世界へ誘ってくれるように感じる。俺にとっては最高の場所だ。そして終えるならこの場所だと決めていた。俺をリセットし全てを断罪してくれる、この場所に。 よく行った遊園地はすっかり寂れ、いつ閉園してもおかしくないような場所だった。もちろん警備は緩く忍び込むことなんて用意だった。 真っ暗だが圧倒的な存在感を放つアトラクションが俺を迎えてくれる。自然と笑みが溢れていた。 そして俺は一直線へと観覧車へ向かった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加