プロローグ

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「ありがとー(りん)くん」 「恵那ちゃんも早く食べよー。後片付けは蓮お兄ちゃんがやってくれるって」 ねっ、と強い調子で言われ、今度は俺がため息をつき「はいはい」と答えて残りの無事だった部分を食べ出す。 「ホントにわかってんのかな」と目を細めるのは、俺よりも頭一つ分は背が低い、弟の彬。 子どもの頃から野球に熱を入れてるせいか、一度も染めてないはずなのに日焼けして茶色い髪を撫でつけ俺の隣に座る。 「皆揃ったから食べよっか」 軽く手を洗った恵那が俺らの向かい側に座り、世の中の母親の真似をして「いただきます」と手を揃えた。 両親が地方へ転勤になり、俺等が三人だけで生活をするようになって早三か月。 同じ高校の制服に身を包みながら、協力し合い平穏で暖かい日々を送っている。 ――表向きは。
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