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俺、恵那、彬。
いつもの並びで家を出て、同じ歩幅で歩き出す。
あちこち目をやりながら、「あっネコちゃんだよ」「ひまわりたくさんだね」と指していく恵那の歩く速度は少し遅い。
それでも俺等は一つ一つに返事をしながら、不自然に歩幅を縮めて付き添う。
「ねえ、もう朝練始まっちゃうんじゃない?二人とも先に行って良いよ」
不意に歩道脇の時計を指して、心配そうに問う恵那に首を振る俺等。
「恵那が転ぶと危ねえから」
「えー」
「子どもじゃないよー」とわざと口を尖らす真似をしながらも、すぐにふふっと微笑む恵那。
花が綻ぶとはまさにこのことかという可愛さに、近くを歩いていた男がへらりと口を開けた。
『天使が・・』とでも言いたげに、だらしない馬鹿面。
俺は目線を前にしたまま、彬に念を送った。
すかさず身体を前かがみにし、恵那を隠す彬。
男が残念そうな顔をするのが見て取れる。
何事もなかったように進んで行くうちに、正門が見え人波もぐんと増える。
「あっ今日体育あるんだあ」とつまらなそうな顔をする恵那を励ましながら、行き交う奴らの声に耳を澄ませた。
『おっ恵那ちゃんだ!ラッキー』
『マジで可愛いよな~』
『一度で良いから話してみてえ』
生まれつき色素の薄い髪や瞳に、ちょっと下がり眉なベビーフェイス。
感情に合わせてすぐ染まる柔らかそうな頬と、本人も気づかない秘めた色気を示すように、艶めく唇。
これらを駆使させてくるくる変わる表情に、心を奪われる奴は男女問わず非常に多い。
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