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誰かが恵那を目にすると、つい立ち止まって見とれる。
だから他の奴らにもすぐ気づかれて、伝染していく邪な気持ち。
遠巻きに指くわえて見ている奴らはまだ良いが、中には身の程知らずにも声をかけてこようとする馬鹿がいる。
「恵那ちゃん、おはっ・・・」
しかしチャラさ全開で近づいてきた奴も、恵那にあと一歩というところで足を止めて顔を引き締める。
「・・・あ、佐伯さん、おはようございます」
「えっ、お、おはようございます・・・?」
きょとんとした恵那を挟んで出迎えるのは、前門の俺、後門の彬。
敵う術を知らない不届き者は、急に他人行儀になりすごすごと逃げ去って行く。
それで良い、命拾いをしただけお前は賢い。
「みんな私には敬語なんだけど、なんでだろ」
「さあ」
「真面目な人が多いんじゃないかなー」
しれっと返す俺や彬を殺したいと思ってる奴は数知れないはず。
幼少の頃から、恵那に男を近づかせないため、ひたすら守り通してきたからだ。
その攻防はこれからも続く。
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