エドガーからの招待状

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エドガーからの招待状

 チェルシーの薬店は今日も繁盛している。  魔女の作る薬だから良く効くのは当たり前。  と言いたいところだが、訪れる客のほとんどは若い娘達だ。 「いらっしゃい、今日はどんな薬をお探しですか?」  爽やかな笑顔で微笑みかけられれば、女の子達は皆、顔を赤らめる。  ユリウスは女の子たちにカモミールのお茶を進めて、たわいない話に付き合うのだ。  そんなチェルシー薬店に今日はユリウス目当てではない客がやってきた。 「ごきげんよう、ユリウス。  エリルはいるかしら?」  アビー・ダルトリーはツンと顎を反らしてユリウスに問いかける。  アビーはアラン・ダルトリー侯爵令嬢で、今は王宮で侍女をしている。 「やぁ、アビー。  エリルならロウと市場に行ってるよ。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな。  お茶でも飲んで待っててよ」  アビーは背後に立つ兵士に馬車で待つように伝えると、一番奥の席に座り、バッグから取り出した本を読み始めた。  程なくエリルとロウが、籠いっぱいの果物を抱えて帰ってきた。 「珍しいわね。市場で買い物なんて」  挨拶をすっ飛ばしてアビーが声をかける。  王宮での事件以降、二人は友だちとして度々会うようになった。     
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