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「………。」
目を開けると、そこには三條くんがいた。
「おはよう。」
「…また半目の顔見てたんでしょ。」
「いいじゃん、別に。」
「嫌だよ。」
「結婚してから一生、寝顔見せないって。無理だと思わない?」
(確かに…。)
それは、ぐうの音も出ない発言だった。
「でも、まだ結婚してないもん。」
「へー…そんなこと言っていいんだ?」
「!」
その時、三條くんの指先が、私の太ももに触れた。
「も、もう朝だよ!」
「夜じゃなきゃ駄目って、誰が決めたの?」
ニヤニヤ顔で言葉を並べてくる三條くんは、絶対に面白がっている。
「私!私が決めたの!」
「却下。」
そして、また口から首へ、鎖骨へ、キスを落とされるのだ。
一昨日の夜から、初めてのことばかりだった。でもその初めての全てが、三條くんをより一層、愛おしく思わせてくれた。
三條くんも同じ気持ちだといいな…そんなことが頭を過った時、
「一緒だよ。」
三條くんが顔をあげて私を見つめた。私の頬を包み込む指先が暖かい。
「野々子が、愛おしいよ。」
そう言う三條くんの、私を見る瞳は優しさで溢れていて、
「うん。」
腕を伸ばして三條くんに抱きつくと、私から三條くんに口付けた。
そしてその日は、そのまま一日中じゃれあった。
十六歳の或る日…夏の一頁。
fin
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