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「…ごめんね、狭くない?」
「くっついて寝れば大丈夫だよ。」
そう言って、三條くんは私の背中に腕を回してきた。
(わわっ。)
焦ると同時に、気がつくのだ。密着して、三條くんの鼓動が聞こえる。…三條くんのそれも、私同様に急いて動いていた。
「………。」
(そうか…。三條くんも初めてなんだ。)
「野々子。」
「うん?」
顔を上げると、額に一つ、キスをされて
「お休み。」
そう言って、三條くんは目を閉じた。
「待ってる。」三條くんは、私が緊張していることを知っているのだ。自分から誘っておいて…情けない。
そんな思いで眠りについた翌朝。
目を覚ますと三條くんと目が合った。
「…お、おはよう。」
「おはよう。」
私は、眉を顰める。
「寝顔…見た?」
「見た。」
そしてポコポコと、容赦なく三條くんを叩くのだ。
「ちょっ、何?」
しかしあっさり、その手首は三條くんにより動きを封じられた。
「だって…。」
言葉につまる。栞ちゃんの家に泊まりに行った時、栞ちゃんに教わって、知っていることが一つある。
「私、半目開いてたでしょう?」
「うん。」
「うわあああああぁぁっ!!」
私は布団で自らの頭をすっぽり隠す。そう、私は寝顔がこの上なく不細工なのだ。
「仕方ないよ。貴女、目、大きいじゃん。瞼におさまりきらないんだよ。」
「…本当に?」
「いや、分かんないけど。」
また三條くんを叩いて、精一杯の恥じらいを伝えると、またしてもそれは制されて、唇が重なった。
「おはよう。」
「…さっきも言ったよ?」
「そうだっけ?」
そうして、私たちの一日が始まった。
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