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朝ごはんはトーストと、目玉焼き、ウインナーに簡単なサラダ。定番なのだが。
「美味しい?」
「ん。」
多分、誰でも作れるもの。それでもやっぱり、好きな人からの「美味しい。」は、特別なものなのだ。
「今日、どこか行く?」
「あ、お昼はストベに行きたい!」
「本当、飽きないね。」
「ストベのパン、コンプリートするって決めてるの。」
「太るよ。」
「うぐっ…。」
密かな悩みの一つである。実際、夏休みに入ってから体重が一キロ増えた。しかしここは曲げられない。
「でも、行くんだもん。」
「はいはい。」
「その後は?」
「こう、暑いと特に…って言うのが本音。」
「そうだよねぇ…。」
問題は、私たちのたるみではない。異常気象、温暖化だ。
「あ、それよりさ。」
「うん。」
「アルバム無いの?」
「アルバム?」
「そう。野々子の。」
「あるけど…見たいの?」
「ん。」
「写真写り、良くないよ?」
「いいよ。」
(遠回しに、嫌だって伝えたつもりなんだけどなぁ…。)
やはり、言葉にしないと伝わらない。まあ、相手は三條くんなので、伝えたところで聞き入れて貰える保証はないのだが。
「はい。」
テーブルの上に置かれる三冊のアルバム。ソファーに腰を下ろして、三條くんはゆったりと頁を開いていく。
「全然。」
「何が?」
「可愛いよ。」
(ああ…もうっ!)
三條くんはいつも不意打ちなのだ。心の準備ができてから言って欲しい。でないと、心臓がもたないのだ。その気持ちを込めて、私は三條くんにギュッと抱きついた。
そんな突然の行動にも、三條くんはまるで動じず。ただ、私の頭を撫でてくれて。撫でながらパラリと、アルバムを捲っていく。とても、穏やかな顔つきで。
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