秘密と優越感

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そう言って煙草の煙をふぅーっと吐き出す。その煙は風に乗ってあっという間に流れて消えた。 「紫先生、煙草吸うんだ」 開いたドアから屋上へ出て、後ろ手でドアを閉める。今度は隙間のないようにしっかりと。 「たまにね。意外?」 「めっちゃ似合ってる」 その答えが予想外だったのか、紫先生は一瞬目を丸くしてからぷっと吹き出してから笑った。 「あははっ、まさかそんなこと言ってもらえるとは思わなかったわ。ありがと」 くっくっと笑いながらこっちを見る目がどこか楽しそうで、私もなんだか楽しい気持ちになってくる。 「屋上って立ち入り禁止じゃないの?」 そう言いながらフェンスに近づく。 「生徒はね。私は教師だし、鍵もいつでも持ち出せるし、いいの」 「うっわ、不良教師」 「授業サボってこんな所に来る不良に言われたくないわね」 口ではそう言っているけど顔はとても穏やか。 「私だってたまには一人になりたい時くらいあるもん」 「一緒だね」 そう言って笑う紫先生の顔がとても綺麗で、もっと見ていたい、もっといろんな表情が見たい、そう思った。 でも、そこから会話は全くなくて。でも無言のその空間もちっとも苦じゃなくて。     
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