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よくわからない、夢だった。
暗黒の中から一筋の光が放たれ、髪も衣装も決めた一人の青年のもとに注がれる。
彼は細長く舞台の奥へと延びた椅子に腰掛け、ピアノへと指を伸ばした。
ふわり。ピアノと彼の指の間の空気が、場を読んで避けたように、彼の指は違和感なく鍵盤の上に着座する。
トン、と鍵盤が鳴ったーー正しくは、彼の指が鍵盤を押すことで連動した柔らかなハンマーが、ピンと張った弦を打った。ピアノが根本的には打楽器であることを想起させる響き。
名も知らぬ曲が弾かれ、そして青年は立ち上がり、誇らしげに頭を下げた。
(誰……?)
知ってるようで、知らない顔だった。
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