道端の石はかく喋る

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 遠くから、高低する耳障りな機械音が聞こえてきた。  正当性を主張できる復讐とはいえ、犯罪を犯した自覚はある。逃げなきゃ、そう思った。  サツキとナツ、二人は無様にそこで、いつまでも死んでればいい。  私はノロノロと立ち上がった。そして滲んだ視界と回らない頭で周囲の状況を把握しようとする。その瞬間、肩に違和感がした。 「日向真鶴さんですね」  ついぞ忘れていた、私の本名。忘れたままで死にたかったのに、誰なの。私の腕を後ろ手に固めている人は。 「警察です」 「警察……?」  到着が、早い。早すぎる。さっきのサイレンは、まだ遠くに感じたはずなのに。 「……お母さまが、お探しですよ」  私の前にごろりと横たわる、丸太のような人体に目をくれて、私のやる気を削ぐようなことを言う。 「嘘言わないで……ママは死んだのっ」  喉の奥になにか詰まったように、嗚咽する。 「……お母さまが、辛うじて助かりました」  言い方に、引っ掛かった。
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