道端の石はかく喋る

8/8
前へ
/14ページ
次へ
 ゴロリ、と音をたてて、血みどろの石を私は落とす。 「ぱ……パパは………………」  見上げた警官の眼差しですべてを察した私は、肩を震わせる。  どうして、よりによって、一人だけ先に逝ってしまうの。残される苦しみなんて、味わいたくないーー。  けれど、私の心を見透かすように、警官がこう言った。 「あなたが死ねば、お母さまが一番苦しむことになります」  んぐっ、という変な音が喉でなった。  ーー確かに、いま私が生きることを選んだら、一人の喪失を二人で分け合える。でも私が死んだら、ママは二人分の痛みを一人で背負わなきゃいけない。 「学校のご友人から、ここにいるーー西陽菜々さんと杏佳アンナさんから、あなたが脅迫を受けていたことは聞いています」  だめ押しの一言だった。どうせ私も裁かれる。けれど、こいつらの悪行も暴かれるのなら……ママが生きてる今、強いて死ぬ意味はない。 「あの」 「なんですか」  後ろ手にされた私の腕は緩めてくれないけれど、その口調は柔らかかった。 「ママに、会わせて」 「わかりました」  彼はそう言って、私をパトカーに誘った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加