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ゴロリ、と音をたてて、血みどろの石を私は落とす。
「ぱ……パパは………………」
見上げた警官の眼差しですべてを察した私は、肩を震わせる。
どうして、よりによって、一人だけ先に逝ってしまうの。残される苦しみなんて、味わいたくないーー。
けれど、私の心を見透かすように、警官がこう言った。
「あなたが死ねば、お母さまが一番苦しむことになります」
んぐっ、という変な音が喉でなった。
ーー確かに、いま私が生きることを選んだら、一人の喪失を二人で分け合える。でも私が死んだら、ママは二人分の痛みを一人で背負わなきゃいけない。
「学校のご友人から、ここにいるーー西陽菜々さんと杏佳アンナさんから、あなたが脅迫を受けていたことは聞いています」
だめ押しの一言だった。どうせ私も裁かれる。けれど、こいつらの悪行も暴かれるのなら……ママが生きてる今、強いて死ぬ意味はない。
「あの」
「なんですか」
後ろ手にされた私の腕は緩めてくれないけれど、その口調は柔らかかった。
「ママに、会わせて」
「わかりました」
彼はそう言って、私をパトカーに誘った。
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