湯煎

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今思えば、彼女との出会いは高校一年の時。 二学期に入った頃、彼女から声を掛けてきた。 「何読んでるの?」 私は読書しか趣味がなく、誰とでも分け隔てなく話す彼女は、私とは別世界にいた。 彼女は、いつもの調子で話しかけたのかもしれない。 でもその時、確かに鼓動が早くなったのだ。 それはたぶん、『一目惚れ』というやつなのだろう。 私は人生で初めて、人に惹かれ惚れるということを感じたのだ。 それからの私と彼女は、周りの子から見ても『仲の良い友達』になっていった。 土日には必ず遊びに出かけ、学校でもよく話した。私も、その時間は心が安らいだ。 その時だけは、日頃のストレスも感じなくなったのだ。 そんな日々が、一年の終わり頃まで続いた。
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