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「大きくなったら迎えに行くって。何の因果か、彼女はすぐに見つかった。でももう俺のことなんて忘れてるかと思って、声をかけることが出来なかった」
「……せっかく見つけたのに、先輩は声をかけないんですか?」
「否。声をかけるよ。忘れられてても良いから、また彼女の傍に居たかった」
駐車場で送る、と言われ、私はありがたく先輩の車に乗り込む。
「で、声をかけたんだ。この前」
「幼馴染みさんは、覚えてくれてました?」
「忘れてた。……と言うよりは、気付かなかったんだろうな。中学に上がるときに両親が離婚して苗字が変わったから。幼馴染みが俺ってことには気付いて無かったけど、彼女は俺の名前も約束のことも覚えていた」
喉が詰まるような感覚に襲われ、鼓動が早まる。
車は街中を外れ、小高い丘の頂上へ続く一本道を走っている。空を見上げると、会社を出たときには見えなかった星がうっすらと目視出来る。輝く星はいつ見ても綺麗だ。
「俺が幼馴染みだって気付いて無かったけど、嬉しかった。20年前の約束だから、忘れてても文句は言えないし。彼女にどうやって近付こうかと考えたけど、たまたま社内で2人になれた。これ以上のチャンスはないと思ったよ」
先輩は行き止まりで車を止めると外に出た。車のライトを消しているせいで辺りは頗る暗い。しかし、星は良く見える。
私は落ち着いている彼とは対照的に、かなり動揺していた。
――もしかして、その幼馴染みって。
「遅くなったけど迎えに来たよ、あさ」
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