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ああ、また寒くなるんだ。満たされない気持ちと、自分の行く先を考えると重い溜息をつく。
それと同時に、携帯が鳴る。
「ユカ、久しぶり!」
それは郷里の友人からだった。
「ユカ、電話番号黙って変えるなんて酷いよ~。」
「ごめーん、誰から番号聞いたと?」
つい、故郷の言葉が口からこぼれる。
「ユカのお母さん。それより、ユカ、大変だよ!」
「え?なに?」
「マサトくん、死んだんだよ!」
「えっ!ウソッ!なんで?」
「交通事故。」
「いつ死んだの?」
私はついこの間、あったばかりのマサトが死んだことにショックを受けていた。
携帯電話を持つ手が震えた。
「うーんとね、2月13日!」
そんなバカな。あの日、私はマサトと会っていたのだ。
「嘘!だって、私、あの日、マサトと会ったんだよ?」
「ありえないよ、それは。だって、マサトくん、2月13日の早朝に交通事故で死んだんだもの。」
「からかってんの?怒るよ?」
「こんな冗談、言うわけないでしょ?」
私は混乱した。確かに、あの日の夜、私は...。
その時、後ろでガコンと音がした。
自動販売機で、誰かが飲み物を買っている。
男だ。
ゆっくりとその男は、顔を上げる。
長身だ。
「...えっ?」
その微笑はまっすぐに私にむけられていた。
「ユカ、遠回り、しよっか。」
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