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薄暗い街灯、古びた自動販売機、小さな駄菓子屋も、クリーニング屋、近所の人しか集まらない喫茶店も当時のままだ。
「どうして?」
私がそう呟くと、マサトは、
「とりあえず、寒いから、歩こうか?」
と言って微笑んだ。
あの頃と変わらない笑顔。笑うとほぼなくなってしまう、つぶらな優しそうな瞳が大好きだった。
懐かしさと切なさが、胸にじんと広がって、私はマサトの後をついて行く。
「ユカに会いにきたんだ、実は。」
「福岡から?」
「うん、無性に会いたくなってさ。」
「なってさ、だって。なんか東京の人みたいじゃん。」
「あはは、じゃあ、会いたくなったとよ。だけん、会いにきたとよ。」
「あはは。ねえ、この道、なんだか故郷の町の道にそっくりじゃない?」
「そうだな。俺も、こんな場所があるなんてびっくりしたよ。」
缶コーヒーを飲みながら、私たちは、今の近況のこと、故郷の友人達のことで盛り上がって、ずいぶんと歩いた。
「ねえ、マサト?私がマサトに告白した日のこと、覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。あれは度肝を抜いたね。バレンタインデーならともかく、その前の日にチョコレートをもらうなんて思ってもみなかったから。」
「マサト、優しいから、私がわざと遠回りして家に送ってもらったの、知ってたんでしょう?」
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