缶コーヒーと遠回りの夜

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「うん、俺も、同じ気持ちだったから。少しでも、ユカと一緒に居たくて。」 「あ~、懐かしいなあ。」 「うん、そうだな。」 「ねえ、マサトは、今、彼女とか、いるの?」 「いや、今は居ないな。」 「...そう。」 「ユカは?」 私は黙って首を横に振った。嘘をついた。私はずるい。 胸の奥がチクリとうずく。 私は県外に就職が決まり、マサトは地元の自分の家の家業を継ぐために残った。 最初は、遠距離恋愛で頑張っていたものの、仕事に振り回される毎日、疲弊してついつい、マサトとの連絡も絶え絶えになり、私は、すぐ側にある恋愛に走ってしまったのだ。 道ならぬ恋、相手は妻子ある上司だ。いまだに、不毛な関係をずるずると引きずっている自分に嫌悪感を覚える。もう一度、やり直せるものなら。そんな考えがチラリとよぎったが、やはり私は上司のことを諦めきれない。 「遠回り、しよっか。」 そう言うと、マサトは微笑んで私の手を握った。 氷のように冷たかった。 だけど、私はその手を温めようと、握り返した。 私たちは、今まで離れていた時間を埋めるように、とめどなくいろんなことを話した。 ただし、私の今の恋愛については何も話すことはなかった。     
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