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自分のアパートに着き、マサトに家にあがるように促したが、明日仕事だからと、マサトは私を送ってそのまま帰ってしまった。
「せめて、電話番号だけでも。」
と私は、都合のいいことを彼に求めた。
電話番号を変えて、彼と連絡がとれないようにしたのは自分だろう。
「会いたくなったら、また来るけん。」
そう言って、マサトは手を振った。
怒っているのは当たり前だ。
「ごめん、マサト!ごめんね!」
謝ったところで許してもらえるはずはないが、私はマサトの背中に叫んでいた。
「なんば謝っとうと?俺はなんも思うとらんけん。心配すんな。」
私は泣いていた。
マサトは微笑んで、
「今日は、遠回りしてくれて嬉しかったけん。もう泣くな。」
と私の頭を撫でた。
そして、私は、また毎日満員電車に揺られ、代わり映えのない仕事をとつとつとこなし、不毛な恋におぼれる日々を過ごすのだ。
バレンタイン当日に、上司は家族と過ごし、そのあくる日に彼にご機嫌とリのようにホテルで抱かれた。
ホテルでいつものように、時間差で先に部屋を出て、最終電車に乗る。
「なにやってんだろ、私。」
自分がたまらなく惨めになった。
しかし、この現状を招いたのは、紛れも無い自分なのだ。
「あ、雪。」
電車で自宅の最寄の駅に降り立つと、雪がちらついてきた。
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