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長親がしばらく荷造りをしていると、二俣城より使いの者がやって来た。
使者は長親に書状を手渡すと、荷車に積まれた荷も収めるように言い残して去っていった。
長親は早速書状に目を通すと、先ほど、自らに処罰を言い渡した、二俣城城主、松井宗信からで、長親を救えなかったことへの詫びとこれまでの感謝がつづられており、荷車には、当面の暮らしていけるだけの、金銀がつまれていた。
長親は、もっと早く何か手を打っておけばと書状を握りしめ、唇を噛んで悔しがった。
しばらくすると二俣城の方向へ向き直り、深々と頭を下げたのであった。
いよいよ出立の日、家臣団は誰一人、他家に引き抜かれることもなく全員集まっていた。
下人では、帰る家のないもの達が長親に従った。
驚いたのは、矢作家以外の統治では嫌だという理由で、数世帯の領民も同行することになったことだ。
なんとも大所帯での出立となってしまったが、長親は行動を共にしてくれる家臣達を心強く思い、遠江に別れを告げ、西方へ向けて旅立ったのであった。
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