story.002 神川 勝元

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満開の桜の花びらがハラハラと舞散る中、中学三年生になった勝元は、野球部の練習を終えてヘトヘトになりながら日課となっている祖父が指導する道場へ向かっていた。 道場へ入ると奥の方から『今日の練習はどうであった。』と祖父から声をかけられた。 『もう、ヘトヘトだよ。』力なく答えた。 勝元は小学生の頃より野球をやっていたが、何をやるにも集中力が必要だとの祖父の考えで、槍術と居合道を祖父の道場で習っていた。 『じいちゃん、だから今日は軽めに頼むよ。』 軽めの練習を懇願するが、祖父の雷が落ちる。 『何を言っておるかっ。疲れている時こそ己の真価が問われるのだぞ。今日もいつもどおり厳しくいくからな。』と言いながらも、目は優しく笑っていた。 それから二時間ほどいつもどおりのメニューをこなして、『ありがとうございました。』の挨拶と同時に大の字にぶっ倒れていた。 『勝元、今日はどうする。家に帰るのか。ばあさんが飯は用意しているから、食っていけ。泊まってもかまわんぞ。』 祖父は勝元の上達ぶりに目を細目、【野球の腕前は知らんが、槍術にしても居合にしても相当なものになったぞ。】と思い微笑んでいだ。
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