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俺が奥村さんと話していると、蘭が通りかかって口を挟んだ。
「知らなかったの?
ここなの家は、美容室なんだよ」
「へー。知らなかった」
美容師の娘なら…ここなっていうキラキラネームなのも頷ける。
…個人的には、漢字の名前の方が好きだけど。
「ここら辺では、結構有名な美容室だよね~」
「そうそう!
素敵なサロンだから、月一で通っちゃうよ~」
…なんだ?このチャラ男な声は?
ふとそちらの方を向くと、道具係副班長の神谷正樹がいた。
背は低いけど髪を遊ばせているイケメンで…いわゆる遊び人だ。
「蘭ちゃんとも時々会うよねぇ~」
「あたしに色目使ったら、金髪チビに殺されるよ」
クールに受け流して彼女が指差した先には、目が肉食動物の忍くん…
俺は友人を殺人鬼にさせないために、蘭と神谷の間にさらっと入った。
「そもそも神谷は彼女いるんだろ?
蘭みたいな純情派には関わるなよ」
「え?別れたよ?」
けろりと答えた彼に、俺は驚いて彼を後ろに向かせた。
「ちょ、付き合い始めたのって、一ヶ月前じゃなかったっけ?」
「二週間しか持たなかったよ」
二週間!!
…一度も付き合ったことがない俺からしたら、理解できない。
まあ、純以外には恋愛感情を持ったことがないけど。
「松原…だっけ?
どっちが振ったんだ?」
「俺」
「なんで!?」
俺が尋ねると、彼は少し考えてから口を開いた。
「松原って少女漫画が好きみたいでさ。
そのシチュエーションを再現しろってしつこくて…」
「…例えば?」
「壁ドンとか」
「あーもういい」
別れ話がのろけに聞こえるのは何故だろう…?
神谷の元カノ、松原舞香は、純とヒロインを取り合うほどの美人だ。
入学当初は人気だったけど、プライドが高いせいで人気はだんだん薄れていっている。
「それで、奥村に目をつけていると…」
「まあ、時には質のいいサラダも食べたいからね」
…女子を食べ物扱いするなよ。
「お前より背が高いけどいいのか?」
「今、ここなはヒール履いてるからね」
あ、そうか。
夏休みだから、ほとんどの人は私服で来てるからね。
「かっわいいよなぁ~
程よくヘルシーな感じで」
「はいはい。
勝手にしとけ」
神谷と目があった奥村がほおを赤らめたので、俺はなんだか嫌になってそっとその場から離れた。
奥村は本気なのに…あいつは、サラダ扱いしやがって。
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