幽霊からの証言

5/32
前へ
/92ページ
次へ
「少し疑問に思っていたことがあるんだが…」 意外と猫舌だからなのか、シャーロックはたこ焼きを半分に切ってから食べた後、蘭の方を向いた。 「なんで9時に撮影なんだ? 別に、8時でも最近は真っ暗だし、9時じゃあさすがに…時間が遅すぎるだろう?」 すると、彼女は顔を真っ青にして、シャーロックから目をそらした。 「出るらしいぜ?」 忍が唐突に蘭の肩を持ち、みんなに向かってニヤリと笑ってそう言った。 俺は怪訝な表情をして、「出るって何が?」と尋ねた。 「何がって…出るといえば、幽霊だろう?」 …誰がそんなことを決めたんだ。 「忍。どんな霊なんだ?」 シャーロックが尋ねると、忍は急に立ち上がって部室の部屋の電気を消した。 ドタバタ、ドタバタ!! 「きゃーーー!!や、やめてよっ!!」 …蘭、暗くなっただけで驚き過ぎだ。 パチッ。 忍が撮影の時に使う懐中電灯を、自分の顔の下から照らして、顔の凹凸をくっきりと見せた。 「ひっひっひっひ…」 「きゃーー!!」 ガラガラ、がっしゃん。 「蘭…お、重い」 「あ!ごめん、純…」 彼女たちの会話から推測するに、蘭が純に抱きついたらしい。 「夜中の8時。ゆら~りと動く、奇妙な男の影」 どこかの怪談家のような口調で、彼は話し始めた。 「その影はキラリと光る物…そう。 刀を持っているのでした」 …まあ、幽霊だから、斬り殺しはしないだろう。 「その男は深手を負っていた侍。 彼は死ぬ直前、腹に刀を差したまま神社を歩き回り、生死をさまよったそうだ」 そう忍が締めくくると、俺は心の中で「んなわけあるかよ!!」と叫んだ。 忍が部室の電気をつけると、俺はすぐに質問した。 「その侍は8時から9時まで、ずーっと腹に刀を刺された状態で歩き回っていたのか?」 「さあね。 そんな細かいところ気にするなよ」 …要するにフィクションだってことだね。 俺はホッとして、紙コップに入っていた炭酸飲料を煽った。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加