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「少し疑問に思っていたことがあるんだが…」
意外と猫舌だからなのか、シャーロックはたこ焼きを半分に切ってから食べた後、蘭の方を向いた。
「なんで9時に撮影なんだ?
別に、8時でも最近は真っ暗だし、9時じゃあさすがに…時間が遅すぎるだろう?」
すると、彼女は顔を真っ青にして、シャーロックから目をそらした。
「出るらしいぜ?」
忍が唐突に蘭の肩を持ち、みんなに向かってニヤリと笑ってそう言った。
俺は怪訝な表情をして、「出るって何が?」と尋ねた。
「何がって…出るといえば、幽霊だろう?」
…誰がそんなことを決めたんだ。
「忍。どんな霊なんだ?」
シャーロックが尋ねると、忍は急に立ち上がって部室の部屋の電気を消した。
ドタバタ、ドタバタ!!
「きゃーーー!!や、やめてよっ!!」
…蘭、暗くなっただけで驚き過ぎだ。
パチッ。
忍が撮影の時に使う懐中電灯を、自分の顔の下から照らして、顔の凹凸をくっきりと見せた。
「ひっひっひっひ…」
「きゃーー!!」
ガラガラ、がっしゃん。
「蘭…お、重い」
「あ!ごめん、純…」
彼女たちの会話から推測するに、蘭が純に抱きついたらしい。
「夜中の8時。ゆら~りと動く、奇妙な男の影」
どこかの怪談家のような口調で、彼は話し始めた。
「その影はキラリと光る物…そう。
刀を持っているのでした」
…まあ、幽霊だから、斬り殺しはしないだろう。
「その男は深手を負っていた侍。
彼は死ぬ直前、腹に刀を差したまま神社を歩き回り、生死をさまよったそうだ」
そう忍が締めくくると、俺は心の中で「んなわけあるかよ!!」と叫んだ。
忍が部室の電気をつけると、俺はすぐに質問した。
「その侍は8時から9時まで、ずーっと腹に刀を刺された状態で歩き回っていたのか?」
「さあね。
そんな細かいところ気にするなよ」
…要するにフィクションだってことだね。
俺はホッとして、紙コップに入っていた炭酸飲料を煽った。
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