幽霊からの証言

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ババ抜きだけでは時間は潰れなかったので、ポーカーをしたり、純が持ってきていたUNOをしたりした。 …シャーロックは熱中症のはずなのに、全部勝ったことに、俺は少し不満を抱いたけど。 そして、なんだかんだで8時40分。 俺たちは学校を後にした。 「うわっ… 先週買ったばかりの靴なのに…」 忍は忌々しそうにぬかるんだ地面を見て、ため息をついた。 「さっきのゲリラ豪雨のせいだな。 その白い靴は、しばらく履かない方がいい」 シャーロックが冷たく忠告すると、俺の方を振り返った。 「本当に今日、撮影するのか?」 「大丈夫。 アクションはないよ」 でも、やっぱり足元が気になって、出来るだけ用心深く歩く。 ああ…裾が長い袴を着ていなければ。 「じゃあ、俺はここで失礼するよ」 シャーロックが手を挙げて、小さく微笑んだ。 暗闇であまり見えないけれど。 「ねえ、シャーロック。 撮影の見学だけでもして行ったら?」 蘭が少し寂しそうに彼に言った。 せっかく蘭が助監督なのに、シャーロックが一度も関わらずに撮影が終わってしまいそうだったから提案したんだろう。 でも、彼は頭を横に振り、俯き加減に下を向いた。 「いいよ。 俺は探偵だ。演技を見たって推理できない」 そんな風にはぐらかし、彼はスタスタと遠くまで行ってしまった。 真っ暗な神社に一番乗りに到着した俺たちは、忍が懐中電灯で機材を置いている場所を見つけて、そちらへ向かった。 「圭、カツラ被っておけば?」 「あ、うん…」 あまり気が進まない… あのカツラを被ったら、なんとなく女子のように見えてしまうから、嫌なんだよなぁ… 俺は渋々奥村さんが入れていたトランクに手をかけた。 …あれ? 「どうしたんだ?圭」 忍が俺の手元をライトで照らし、そこを見ようと覗き込んだ。 「これ、鍵がかかってるから開かないよ」 しょうがない。来るまで待とう!と言わんばかりの表情をして、少しとぼけてみせた。 「じゃあ、屋根のあるところでお茶をしよう?」 ラストシーンはそんなに時間を取らないはずなのに、純は水筒に紅茶やコーヒーを入れて持ってきていた。 そして、俺たちは神社の階段に腰掛けようとした瞬間だった。 「きゃーーー!!」
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