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まるで発作でも起きたように見開いた目を血走らせ、呻き声を洩らす五味は苦しみながら自身の胸を強く握り締め、そしてその場に倒れ込んだ。その光景は夜空に押し潰され、とても静かなものだった。
「ねぇ、どうやったの?後ろ姿で分かんなかった」
「ただ念じるだけだよ」
荊木勇士は自分と同い年だったと分かり、それから武真は荊木と一緒にファストフード店でコーヒーを飲んでいた。“ヒーロー”は何も筋肉ムキムキな大男でも、ましてや大人でもなく、普通の高校生でしかも雰囲気だって全然怖くない。
「何で有名になりたくないの?」
「だってマスコミとか家に来るんだよ?」
「あそっか」
「悪い奴が人知れず居なくなればそれでいいでしょ」
「そうだね。何で依頼しないと動かないの?」
「そうじゃなきゃテロリストと同じじゃない?」
「そっかぁ」
「僕はあくまで、敵討ちを代わってあげたいって思ってやってるだけだから」
武真から聞いたそんな話を岡元にもしながら、北村と森阪達は防犯カメラに映っていた「シグマ案件」の犯人の歩く姿が最後に確認出来た住宅街を歩いていた。その先頭を進む警察犬のマックスはとあるアパートの敷地に入り、やがてとある一室の前で腰を落とすと、北村とアイコンタクトを交わした岡元が立ち代わり、そのドアを叩いた。
「警視庁から来た特テロだ。開けてくれ」
しかし岡元の呼びかけに反応はなく、落胆の沈黙が流れたものの、その時突如マックスが吠えた。その体がビクつくほどの緊迫にとっさに顔を向けると、そこにはアパートの敷地に入ってきた、こちらの方を見て固まっている男性の姿があった。“一目散に逃げる事はせず”に困惑したように固まっている男性との間に妙な沈黙が流れるが、再びマックスが吠えたところで男性は後退りする。
「ちょっと待て」
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