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伏し目がちだった蒲田はまるで「えっ」というような素振りで北村に振り向いた。
「・・・はい」
「暗殺請け負い人として世間では炎魔大王という名で知られていた荊木勇士さんと、面識はありますか?」
「いえ、まさか炎魔大王があの荊木さんだったなんて、逮捕された時知りました」
「亡くなった塩木さんには前科がありましたが、例えそういう人でも、炎魔大王は依頼が無いと人は殺しません。塩木さんが抱えていたトラブルとかご存知ないですか?」
明らかに暗い表情の蒲田、それに加えて何かを言おうとして止めるという迷いも見せる。
「あのぉ、もしかして、蒲田さんとの間に何かあるんですか?」
森阪の持ち前の柔らかい口調に蒲田は顔を上げる。表情や素振りで、図星なのだろうと北村は勘づくが、森阪と同じく蒲田が喋り出すのを待っていた。するとむしろそんな柔らかい2人を前に、蒲田は心を開くように観念した顔色を見せた。
「塩木には、ストーカーされてました。店でのパワハラに始まって、エスカレートしていって。でもある時、これ以上やったら警察に突き出すって言ったんです。するとストーカーはしなくなったんですけど、何日か後で、私の妹が塩木にレイプされて」
「それで、炎魔大王に依頼を?」
「・・・はい」
「警察には通報しなかったんですか?」
「しましたよ!でも・・・妹がひき逃げに遭って死んじゃって、証言する人が居なくなって、塩木が否認したらもう何も出来なくて、だから」
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