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帰ってきた早々、そう言った夏川が指を差した方に目を向ける北村と森阪は、北村のデスクに置かれた特テロ行き案件調書に足を向かわせた。ここで言う勇者案件、それはまだ勇者法に適用されていない殺人案件。
「いやぁ聞いてよ森阪ちゃん。とんだ偽装勇者でさぁレオとかいうの。ホント自警団居なかったら死んでたよ」
「ハズレでしたねぇ」
夏川のバディ、桐山と森阪が世間話ばりに喋っている横で北村は案件調書に目を通す。被疑者の名前は「シグマ」、現在身元不明、刃物で心臓が刺されたような傷跡の遺体の近くにはシグマの記号が残されているのが特徴。何故特テロに回されたか、それは犯行現場が土の上にも拘わらず、被害者の周りに被疑者と思われるゲソ痕がまるで無いから。それから北村はカラースプレーで壁にシグマの記号が描かれた証拠写真を手に取る。
「荊木ってどんな奴だったの?」
パソコンで何やらカチカチしながらの桐山の質問に、森阪は荊木の余罪の事を喋り出す。
スーパー店長焼殺事件の10日後に起こっていた2つ目の焼殺事件「暴力団幹部焼殺事件」。ヒーローというものが現れ始めると、“既存”の暴力団員への襲撃事件も増え始めた。今や普通の人間は暴力団なんてやっていられない、暴力団員と言えばもうほとんどが超能力者だ。しかしそれでも、暴力団員は的になりやすい。
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