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北村と森阪は開店前のキャバクラ店に入った。調書では被害者の暴力団員、柳生剛太郎は陰ながらそのキャバクラ店を支配していて、売り上げをせしめるのは無論、キャバクラ嬢を脅して無理矢理犯すなどの悪行にとうとう我慢出来なくなり、キャバクラ嬢の1人が炎魔大王に暴力団員の殺害を依頼したとある。受付のボーイに警察手帳を見せ、通報者であり、当時の捜査官に炎魔大王への依頼を認めたキャバクラ嬢のハルを紹介して貰うと、ハルはもう事件の事など忘れ去ったといったような態度を2人に見せていた。
「今更何ですかぁ?」
「炎魔大王こと荊木勇士さんが逮捕された事はご存知ですか?」
「そりゃあ、あれだけ報道されたし。人殺しの依頼だけなら罪に問われないんでしょ?何よ今更」
「いえ、ただ荊木さんの余罪を確認して回ってるので」
「証拠不十分なんじゃないの?」
「はい。でも状況証拠だけでも固めておかないと」
「ふーん」
「荊木さんと面識はありますか?」
「あの事件まで炎魔大王が誰かも知らなかったんだから、会えないでしょ」
「そうですか。他に荊木さんの余罪について何か知りませんか?」
するとハルは露骨に嫌そうな表情をしてみせる。その表情は初めてではないと、北村は蒲田の事を思い出した。
「悪者殺して何が罪よ」
「でも、あくまで刑の免除だけで、有罪は有罪なので」
「でも証拠不十分なんでしょ?捕まらないんだから、そもそも罪じゃないでしょ」
「まぁ・・・」
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