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「悪者だけ死んで誰も捕まらない、だからヒーローなのよ」
例え自首しても、証拠不十分なら裁判は起こせないし、“法律上では罪として扱われない”。頭の良い超能力者は証拠不十分を狙っているが、“悪人ではない”のだから無闇に人は殺さない。だけど、確実に人は殺されている。それが、勇者案件の最も難しいところ。勇者法はそんなヒーローを炙り出せるという利点にもなっているが、そもそもそれでは、殺人を食い止める事は出来ない。
北村と森阪は岡元大也という超能力者と共に「シグマ案件」の犯行現場に居た。警察との連携を正式に認可された超能力者による自警団の1人。有事の際は無論、特テロの初動捜査時にも超能力者が同行する。これは単に守って貰うというだけではなく、円滑な情報共有の為でもある。遺体があった場所は小さな空き地で、土を踏まなければ進めない奥にあった事から、やれ殺した後で浮かせて置いたとか、被疑者が宙に浮けるとか、憶測が交錯する。
「刃物を浮かせたとかは?」
「オレみたいに?」
森阪は問いに割って入るように応えた岡元に、ハッとしたような顔を向ける。
「そういう事が出来る人は知り合いには」
「まあ単純に犯行可能ってんなら色々居るけど、そもそもやるなら前もって言うだろうし」
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