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「それでは、これより収骨をとり行わせて頂きます」
熱気がこもる小さな部屋に武雄と親族が集められ、部屋の中央に白骨と化した春子が横たわる。
初めて見る白骨にざわついたり、凝視したりする親戚や孫たちの中、武雄は変わり果てた妻の姿にようやく死を感じていた。
もう、あの笑顔いっぱいだった春子の姿はない。柔らかな栗色の髪も、少し荒れてしまっていた指先も、自分を見つめる大きく澄んだ瞳も、たくさん愛した全てが、姿を消していた。
「それでは喪主様より、こちらがお出しするお骨を順番に骨壷にお願い致します」
職員の指示する通りに、箸で骨を拾い上げる。
「……なんとも……軽いな……」
とても脆く今にも崩れ落ちそうなそれを、壺の中にそっと入れた。
武雄に続き、順に皆で壺の中を埋めていく。唯一顔面と認識できた部分も、細かく割られ、納められた。
「お疲れ様でございました」
一通りが終わり、武雄は風呂敷で包まれた骨壷の入った箱を受け取った。
「こんなにも小さくなってしまったか……」
武雄はふと、昨日通夜で耳にした言葉を思い返した。
『諸行無常』ーーー世の中の一切のものは常に変化し生滅し、永久不変なものはない。
「ただ、当たり前に毎日を暮らせればそれでよかったんだがな……」
『武雄さん、『当たり前』の反対の意味ってね、『有り難い』なんですって』
若かりし春子の声が武雄の脳裏に響く。
「そうだな。毎日こそが、特別な日だった……。あの日々こそが……」
気づくと武雄の目からは止めどなく涙が溢れ出し、それは嗚咽へ、そしてこらえきれず崩れ落ち、慟哭へとなった。
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