ある酒場の物語

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「ロミオ。ロミオ!」 子供の声が、酔いつぶれたロミオの耳に届いた。 「なんだ?お前?子供が何故酒場にいる?」 「子供だけど、子供じゃないんだよ。」 「何で俺の名を知っている?酒場の親父に聴いたのか?」 子供は答えなかった。 「ずいぶん呑んだね。」 「まだ呑みたりねえ!・・・親父は?他の客は?」 「みんなもう帰ったよ。明日があるから。」 「明日か。けっ!」 ロミオはよろよろと立ち上がろうとした。 駄目だ。 立てない。 「座ってなよ。私がついであげる。」 女がいつの間にかカウンターにいて、酒をロミオのグラスについだ。 何となくジュリエットに似ている。 「いつの間に・・・済まん。」 ロミオは酒を呑みほした。 まだ酔えない。 どうしても消せない。 「どうして消したいんだい?」 「嫌な思い出だ!苦くて、苦くて!」 「生きていれば、色んな事があるよ。」 子供は遠い目をした。 ロミオは吹き出した。 「生意気だな。お前。」
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