謎の男

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青白く発光して落ち窪んだ眼に大きな口をしている一昨日も見た何かが、こちらを狙っているように身構えていた。私は自分の目が痛い程に見開かれていくのを感じた。有り得ない非現実的な未知の生物に二度も遭遇して自然に身体は固まる。一度目は錯覚か疲れていたんだと自分を納得させられた………でも、もう無理。すべて現実だったんだと認識せざるを得ない場に直面している。  青白い何かは物凄い顔で私達の所へ飛び降りて来た!? (殺されるっ!!)  私はあまりの恐ろしさに動けなかった……しかし『可憐な人』が青白い何かをぶん殴った。青白い何かは道端に転がり『可憐な人』はそれを追い飛びかかったが、青白い何かは素早く電柱伝いに家屋の屋根の上に逃げた。すると『可憐な人』は、屋根の上にこれまた素早く飛び乗り追いかけて行った……………………………………って…… 「え!? え!? ええーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?」 (どんだけ跳躍あんの!? 嘘でしょ………………)  私は青白い何かにも驚いたが、まるでテレビに出てくる忍者のように素早く飛んで追いかけて行った『可憐な人』に度肝を抜かれた。 (嘘でしょ…………)  そういえば…………私は『可憐な人』の事を何も知らない。未だ名前さえ聞いてない。『秋の葉』の常連客というだけで安心していたが、本当は何一つ知らず彼も今まで自分を語る事は無かったのだ。私は急に恐ろしくなり自分の肩を抱いて、身をすくめた。  彼はその日から、私の中で『可憐な人』では無く『謎の男』となった…………
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