マスターの慕情

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ある日あたしの可愛がっているチビが……あ、チビってのは吉乃って名前のバイトの高校生なんだけど、この子がまた若いけど苦労人なのよ。あたし、そういうの弱くて可愛がっちゃってんのよ……話が逸れたわね。そうそれで、そのチビちゃんがあたしに相談してきたわけ………… 「マスター怒らないで聞いてくれる?」 「何? 止めてよあんた、人殺したの?」 「それ、怒るとか言うレベルじゃないんですけど」 「なら怒んないわよ。まあこの歳まで伊達に生きてないから大抵の事は怒ったり驚いたりしないから、言いなさいよ早く」 「……あの人にバイトの帰り二回送って貰った」 「……あの人って誰よ?」 「あの、マスターがファンの超美形」 「は?」 「だから金曜日のイケメン」 「はあああああああああああああああああああああああああん!?!?!?!?」 「マスター声でかっ!? す、すみません……ほら、御客様が皆吃驚してるよ」 「ちょっと待って…………だめ、……あたし駄目!あたし頭痛がするから……暫くあんた店やってて」あたしはショックで倒れそうになりながらスタッフルームに逃げ込んだわよ。 (なあに?何なの、これ?これが飼い犬に噛まれるってヤツ!?? あんまりじゃない吉乃の馬鹿っ!! あの人はあたしの神様なのよ!!)  あたしはスタッフルームの鍵を閉めて独りで泣いたわよ。五年間胸に秘め続けた恋が無惨に破れ去るなんて、信じたくなかったわ。だって彼は特別だったの……彼は他の男と違う何かを感じたのに!? 嗚呼……あたしはもう消えて無くなりたい。  コンコンコン!! 「マスター」  吉乃がスタッフルームをノックして、あたしを呼んでいる。  コンコンコンコン!! 「マスター!?」  あたしは腹が立って返事をしない。もう意地気ちゃったわよ。  コンコンコンコンコンコンコンコンココンコンコンコン!!!!  「………………」 コンコンコンコンコンココンコンコンコンコンコンコンコンコンコ…… 「っあーっ!! るっさいわねえっ!! しかも間に不規則に二拍子挟むの止めてよっ!? 気になるでしょ!! ほっといてよ、もうっ」 「マスター誤解だってば、最後まで聞いてよー」 「やーよっ、どうせノロケ話しでしょ!! もうこっから出ない知らない!! 皆嫌いよーっ!!」 「だからー付き合ったりしてないし、訳があるんだってば!!」
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