マスターの慕情

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「火傷する!! 脱いでっ」チビちゃんが言った事に、あたしは仰天した。  彼はコートとセーターを素早く脱いで、中のシャツのボタンを外し始めた時には………… 「マスター!?」  あたしは鼻血を吹いて、後ろ向きに倒れたのか天井が見えたわよ。タン! と云う音がして、見るとカウンターを乗り越えた彼があたしを覗きこんでいた。 「大丈夫ですか?」    シャツの前ボタンがはだけたままの彼を至近距離で見たあたしの鼻からブバッとスプレーのように鼻血が出た。もはや流血状態世。  「ほ、ほねがい……はたひにほれひひょう、ひかよららいえ(訳:お、お願い……あたしにそれ以上、近寄らないで)」  あたしは鼻を押さえながら顔を背けて彼に懇願した。 (拷問だわ…………)  数分後……あたしは両方の鼻に丸めたティッシュをつめた不様な顔で、笑いながらチビちゃんに介抱されていた。チビちゃんの采配で彼には素肌の上にコートを着て、前をシッカリ閉めて貰った。 (素肌の上にコート…………) 「マスター!? また血が出て来た!? お願いだからこれ以上妄想ストップ」 「あって、あんたらって顔あかいやないのさ(訳:だって、あんただって顔赤いじゃないのさ)」 「あっ」  あたしが彼を見ると、彼はカウンター席に座り両手で顔を隠して笑い堪えていた。肩が震えている…………
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