マスターの慕情

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「あんた!! それ反則よっ何も聞けなくなるでしょーが!! あたしを出血多量で殺す気!?」あたしは鼻血をとばしながら彼を指差して言った。 「え、いや……」彼は困った顔をした。 (うーん、その顔もキュートねぇ…はっ、いけないあたしったら…………これはチャンスよ…………チャンスをモノにするのよあたしっ!!) 「この子の送り迎えは何でしてるの?」 「護衛……としか言えませんね、今は」 「何から守ろうっての? もしかして少女漫画にありがちな財閥の相続人とか? そういうパターン?」 「………………」 「あたしに言えないなら、この子に近付けさせないわよっ!?」 「マスター」チビちゃんがあたしを見た。  彼は困った顔をして、俯いてしまった。その表情は良くこの店で見せる切なげで憂いがありセクシーな………… (ハッ!いけないっ駄目よ駄目っ!)あたしは顔をブルブルふって煩悩を払拭した。 「あなた、いくつ? 名前は?」 「…………春海と言います」 「大学生? 社会人?」 「………………」 (何で言えないの? …………訳あり……何かおかしいわね? まさか……病気とか?) 「病気ではありません」 「えっ!?」あたしは心の中で話した事に応えられて吃驚した。  彼はハッ! とした顔になり狼狽している……………あたしはこの時、彼の外見以外にも俄然興味が沸いたわね。だってあんた、秘密にされる程暴きたくなるって人のサガでしょうよ。 「……分かったわ……あなたも急には全てを話し辛いでしょうよ……でも、あたしもチビちゃんが大事なの。あなた…………ここでバイトしない?」 「マスター!?」チビちゃんが叫んだ。 「フフッ!!」突然、彼は笑った。 「何よ、あたしの店じゃお笑い草だっての!?」
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