悠久の慟哭

聖なる時間

私達姉妹は両親を殺されてから暫く途方にくれたが、向井刑事が随分世話を焼いてくれて夏希は向井刑事の異動先に連れ添って都会で暮らし、先日結婚した。私も都会にある某大学の研究センターで研究者になりたかったので、夏希達の家から少し離れた所に住んでいる。

　感染地帯の封鎖は既に解かれ、出入りも可能となっているが私達には辛すぎて戻れなかった。近辺までは春海を探しに数回行ったけれども……

　渡辺真冬が春海に殺され、春海が去り…………全て終わってしまったと思った。世間は被害が大きくてテロなのか謎の微生物がどこから来たのか等について暫くは騒いでいたが、時が過ぎてすっかり忘れ去られたようだ。

（まだ終わっていない…………）

　私は研究室に戻り、ネットでＨ市に出没する『ヨツグイ』の情報を検索した。目撃情報はかなり寄せられているが被害情報は無さそうだ。まだ発見されていないだけかもしれないが…………。もしも渡辺真冬が最初に出会った化け物と同じように、食った者に変化するようなものならば……かつての春海のように食われた本人でさえ気付いていない可能性がある。それとも…この生物自体があの山で渡辺真冬から生まれた春海の成れの果てなのだろうか？

（捕獲されたら研究者として何とか関われないだろうか？）

　しかし、あの生物がそう易々と捕獲されるのだろうか？　あれは狂暴で人の手に負える生物ではない。