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「だーかーらー肝試しだから盛り上がって集まったんだよ。ね、滝も一緒に行こう。誘えって友達に頼まれてるから、この通り!」久美は俺に手を合わせている。悪い気はしないが、あまり近付くなと大人から言われている土地に行こうとしているので、考えてしまう。
肝試しに行こうとしているその土地は、十年前『感染地帯』として封鎖されていた町の向こうにある山。既に感染病等は無くなり、町はサラ地化され封鎖も解かれたのに誰も住み着かず放置されている。
「あんまり行きたくねーな、ヤバそうな感じする」俺は乗り気ではなく、断るつもりでいた。
「滝って、もしかして恐がり?」久美がいきなり俺を貶めた。
「断ったらそうなる? 悪どいなお前」
「私も友達の信用を失いたくないから必死。ね、滝」
「わかったわかった面倒くせぇなあ! 今度奢れよ」
「やった!」久美は喜んだ。
やがて授業が始まり、俺は居眠り久美は机の下で携帯いじりをし始め、話しは約束したまま……それきりとなった。
日曜日が来て、俺は前川達と合流する地点まで久美と向かった。久美は俺と親戚関係にあり、家も近所で朝から二人で待ち合わせをして一緒に向かったのだ。
「何これ?真っ昼間から肝試しやるつもり?この時間から出発したら現地には昼頃着くよね……ぶち壊しかも」
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