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「よろしい、座んなさい」マスターはお尻を振りながらカウンターに戻っていった。
美夏にはマスターが春海さん目当ての女性を敵視する事は話してあった。心配していたけれど美香はケーキを盾にして、マスターにロックオンされないように上手く挨拶した。流石、我が友。
「いらっしゃい」
私達のテーブルに水とお絞りを春海さんが運んで来てくれた。白いシャツに黒いパンツと黒いエプロン……エプロンを取ればどこか御屋敷の執事を思わせる格好だが、これはマスターが制服として強制的に春海さんに着させているものだ。春海さんが着ると何やら気品が漂うから不思議だ…………
美夏を見ると口をアングリあけた変顔のまま、春海さんを凝視しているので私は吹き出した。
「ちょっと、美夏、口、口、開きっぱなし」
「あっ!! あああこ、こんにちはっ美夏です、吉乃の友達です」美夏は口を慌てて閉じると真っ赤になって、狼狽えながら自己紹介した。
「宜しく美夏ちゃん、春海です。ごゆっくり」春海さんはオーダー表を置いて、ニッコリ笑ってカウンターに戻っていった。
春海さんが私達の席を離れた後も美夏の興奮は続いて、わたしにヒソヒソ声で言ってくる…………
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