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翌日、学校が終わり私はバイトに向かった。何だか不思議な目にあったせいで、昨夜は殆ど眠れなかったし授業中は欠伸ばかりして、ぼうっとしていた。
案の定、バイト中もミスを連発してマスターに注意される。
「吉乃、何かあったの? いいわよ聞いてあげても」
マスターが高飛車に聞きながらも心配してくれる。何だかんだいって面倒見が良くて優しい人で、居心地が良いから私もこのバイトが好きなのだ。しかし……あの出来事をすんなりと話す事は出来ない。もっと心配させるか、病院を進められそうな気がするからだ…………
「ちょっと寝不足なんで、顔洗って来まーす」
私はマスターに言ってスタッフルームに入っていった。後ろからマスターが「あら、お盛んねっ」 と言ってきたが、そっちの方は身に覚えが無い。
(彼氏だってまだ出来ないのに……)
マスターのセクハラ発言は女同士のふざけ合いみたいなもので、あまり気にはならないが彼氏が欲しいのは山々だ。
(そう言えば……『可憐な人』まだ来ないのかな?)
私がバイトし始める前から『可憐な人』は午後五時頃に『秋の葉』に現れる常連だったのに、今日はもう午後六時になろうとしているけれど現れない……
(来ないのかな?)
そう思うと、すごく残念な気持ちになる。私はかなり『可憐な人』に心を持って行かれてるのかもしれない……。これが恋なんだろうか?
私のバイトは午後七時まで。『秋の葉』自体も営業時間は午後八時までだ。それはあまり遅い時間まで営業するより、早朝から開店したほうがこの辺は儲かるから、とマスターが前に理由を言っていた。
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