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警備室の中を、瑛太が心配そうに眺めている。
こんな深夜に非常事態が起こりそうもないが、警備に集中してろよ。俺なら、大丈夫だ。
遠くで機械音が聞こえる。目覚ましのような、警報のような――。
「あの……譲治さん。スマホ、鳴ってます」
「――ん? おう、すまんな」
『譲ちゃん、終わったわよ? どうしたの?』
優華からの心配メール。何だよ、今夜はどいつもこいつも……俺を心配してやがる。
『悪いな、今行く』
短く返して、立ち上がる。が、一瞬、ガクンと身体が傾いだ。
「大丈夫ですか?!」
瑛太が、咄嗟に伸ばしてきた手を払う。
「いい……構うな」
足元がふらつくまま、彼の手を借りずにエレベーターに入る。壁に体重を預けて凭れた。閉じていく扉の間で、戸惑いながらもしっかりと礼をする瑛太の姿が見えた。
「――ちょっ……! 譲ちゃん?!」
エレベーターの中で、へたり込んでいたらしい。
ぼんやりと、優華が見下ろしているのが見える。
「やだ、どうしたの?」
グイと腕を引くが、彼女の力では俺を起こせまい。
床に手を付き、ゆっくりと立ち上がる。優華が何とか支え、15階で降りた。
「もう! しっかりしなさい!」
呆れた声に叱られながら、彼女に引きずられ――いや、俺が彼女に覆い被るが如き体勢で、白いソファーまで運ばれた。
「本当に、どうしたの? こんなに泥酔して」
眉を下げて、優華はミネラルウォーターを満たしたグラスを差し出す。
一気に飲んで、少しむせた。「大丈夫?」を繰り返しながら、優華が背中をさすってくれる。……情けねぇ。
「……すまないな、せっかく、来たのに」
しばらく呼吸を整えて、ソファーの背にもてあました身体を沈める。
自分でも、嫌になるくらい酒臭い。ウォッカを煽ってきた。一本……二本は空けたか? 良く事故らず、飲酒運転で捕まらずに、ここまで辿り着いたものだ。
「譲ちゃん……」
「上野――花村が、吐いたんだ」
戸惑う優華を、グイと抱き寄せる。
ミネラルウォーターを飲み干したグラスが、弾みで絨毯の上に転がった。
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