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でも、俺は崇の言った通り、頑固者だ。引っ込みがつかなくなって、携帯に崇の番号を表示させたまま、小一時間が経とうとしていた。…カチャ。まるで隠れるように、ゆっくりとゆっくりとドアノブが回った。
「……あ」
目が合って、崇はバツが悪そうに呟いた。
「…ただいま」
「お、おかえり」
「「ごめん……」」
俺たちは、そんな所でまで揃いで。言葉を切って、思わず微笑んだ。
「崇、ごめん。俺を喜ばせたかったんだよな? 頭ごなしに怒って、ごめん」
「いや、俺も悪かった。格好つけたかったんだ。改めて、これを受け取ってくれるか? これは、俺の金で買ったもんだ」
箱にも入ってない、裸のままの小さく細いリングが、崇の大きな掌の上で光っていた。
「あ……ピンキーリング?」
「ああ。安物だけどな」
俺の左手の小指に、リングが通される。その気持ちが、何より嬉しかった。
「ありがとう、崇!!」
俺は崇に飛び付いて、項に腕を回してキスをねだった。俺たちは同時に噴き出して、心ゆくまで口付けを交わしながら、飽く事なく笑い合っていた。
End.
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