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巡りて、そして
――2237年。
惑星『ケプラー452b』に、一台の巨大な宇宙船が着陸した。
かつて船団を組んでいたはずの宇宙船。
破滅の確定した地球を捨て、その惑星にたどり着けたのは数ある宇宙船の一隻、『NOAH』と銘打たれた方舟だけ。
自律型環境保全システムでもある『NOAH』はケプラー452bに着陸すると、すぐさま船外の大気状態を地球のそれと比較を開始する。
N2: 48%(ー30%)
O2: 46%(+25%)
Ar: 0.9%(±0%)
CO2:0.02%(ー0.02%)
CH4:4%(+4%)
and etc...
赤と緑の文字が入り混じったケプラー452bの大気成分が、船内のモニターに映し出される。
地球の大気成分からいささか乖離しているその値から、『NOAH』は最適な解として大気中のメタンを燃焼させながら、船内のタンクから大量の窒素を排出する。
N2: 79%(+1%)
O2: 26%(+5%)
Ar: 0.9%(±0%)
CO2:2%(+2%)
CH4:0.001%(±0%)
and etc...
モニターの赤い文字が全て緑になると、『NOAH』はタラップを地表へ下ろしハッチを開く。
一番最初に飛び出したのはセキレイのつがい。バリアフリーのタラップをちょろちょろと途中まで走り降りると、空へと飛び立った。
次に現れたのは好奇心の強い猫。ハッチの横からひょっこりと顔を出し、恐る恐るタラップを降りていく。
その後も次々と動物が『NOAH』の中から現れる中、一向にヒトは降りてこなかった。
ひとしきり動物が船外へ出終わると、船内は静寂に包まれ動くものはなくなり、ただ空調の作り出す対流が草葉や木の枝を揺らすのみ。
『NOAH』の壁面と床にはびっしりと一面を覆う背の高い苔。
時折、苔よりも背の低い昆虫を見かけるものの、基本的に船内に動物の姿はない。
そして、苔の隙間のところどころからは無造作に散らばった白い物体が顔を覗かせる。
その白い物体は骨。それも人骨。
苔に隠されていた『NOAH』の床は、人骨が覆い尽くしていた。
ヒトは『ケプラー452b』に到達できなかったのだ。
ーーそれは、遡ること115年前。
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