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耳に触れた唇の感触が生々しくて、思考回路が一旦停止する。
抱き寄せられたままボーッと立ち尽くす私。
「そろそろ参拝でもするか」
そう言いながら、仁さんが私を解放する。
抱き寄せていた腕が離れた瞬間、私はハッと我に返り、
「…そっそうですね」
そう言葉を返す。
ホント勘弁してほしい…
こういうことにはホント免疫がないんだから…
なんてことを思いながら歩き出そうとする私。
その私の右手を仁さんが摑まえ、
「手を繋いでないとはぐれるだろ」
そう言いながら、繋いだ手をそのままコートのポケットの中に入れる。
女性経験が豊富なんだろうなと思わせるような、自然な動き。
それとは対照的に、全神経が繋がれた右手に集中してしまう私。
仁さんの大きな手が私の手を包み込むように握りしめている。
大きくて温かい手。
その手に握りしめられて緊張はするけれど、前回もそうだけど嫌な気持ちにはならない。
抱きしめられても、手を握られても、嫌悪感は全くない。
社長だからなのだろうか?
素性がわかる相手だからなのだろうか?
何故か解らないけど、嫌な気持ちには全くならない。
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