第一章

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泣くのを我慢しながら睨みつける私に、 「帰りたくても帰れないっていうのは、別れた男が女を家に連れ込んでるからなのか?」 初対面の人に対して普通は聞かないであろうことを、その彼はストレートに聞いてくる。 「えっ?…あっいやあのっ…」 連れ込んでるわけじゃない。 他の友達も来ているはずだから、創さんと姉の二人っきりってわけでもない。 でも… 二人が家にいるのは事実で、二人に会いたくないから帰るに帰れないわけで… というか… ぶしつけな質問に答える必要などないのかもしれない。 だけど… 「……まぁ…そういう感じというか……」 こうも真っ直ぐに見据えられたら、答えざるを得ないというか… 「そういうことなら、普通は帰れないよな」 「えっ…」 帰れなかった私の行動を、目の前の彼が肯定する。 「これもなにかの縁、一緒に飲むか?」 帰るに帰れない私に目の前の彼は同情でもしたのか? そんなことを言ってきた。
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