第六章

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うわっ… 微笑んだ… やはり私は笑顔フェチなのかもしれない。 クールな表情からの微笑み。 ギャップに、胸がキュンとしてしまう。 仁さんが去って行った方へと視線を向けながら、微笑みの余韻に浸る。 余韻に浸って5秒程。 「あっ、食事の支度をしなきゃ」 独り言をいいながら、すぐ食べられるようにと食事の支度を始める。 後はお蕎麦にお出汁をかけるだけのところで、シャワーを浴び終えた仁さんがキッチンに入ってきた。 「待たせたね。何か手伝うことはある?」 手伝うって… 「あのっ…大丈夫です。後はお蕎麦にお出汁をかけるだけなので…」 「そうか、それじゃ早く出汁をかけて、俺が持っていくよ」 「えっ?あっいやあのっ、私が持っていくので仁さんは先に座っててください」 同居しようが婚姻関係を結ぼうが、仁さんと私の本当の関係は社長と平社員。 「ついでに持っていくから、早くかけて」 「私が持っていきます。社長に手伝わせるなんてとんでもないです」 と私が言うと、 「あのさ、俺と君は結婚が決まった恋人同士。そういう設定だよな。普段からそれを意識して行動しないと、他人の目は欺けないよ」 と仁さんが言ってきた。
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