第六章

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そして、 「特に身内は簡単には騙せないよ。好きでもない男を彼氏だと思うことに抵抗があるかもしれないけど、関係を疑われない為にもこれからは俺のことを本物の彼氏だと思って接して欲しい。俺の方も君のことを本物の彼女だと思って接するから」 真剣な表情をした仁さんが私を見つめる。 見つめられた私は、 「あっいやあのっ…抵抗とかそういうのはないですけど…」 逆に仁さんの彼女役が私なんて申し訳なくて… 「…っていうか…私のせいでこういうことになってしまったので、申し訳ないというか…」 しどろもどろになりながら言葉を返す。 「申し訳ないと思うなら、今この瞬間から俺のことを本物の彼氏だと思って接して欲しい」 真剣な目がまだ私を捉えている。 確かにそうかもしれない… 普段からそう思って意識して接してないと、すぐにばれてしまう。 「…解りました。これからは仁さんのことを本物の彼氏だと思って接します」 返事を聞いた仁さんの表情が和らぐ。 和らぐと同時に、 「解ったなら、早く出汁をいれて。俺が運ぶから」 さっきのやり取りへと戻り、お出汁をいれるよう急かしてくる。 言われるがままにお出汁をいれ、お盆に乗せ、そして仁さんに手渡す。 お盆を持った仁さんがキッチンから出ていく。 その後姿を見ながら、 これから先、ほんとに大丈夫かな… ちゃんと彼女役務まるのかな? 不安になってきた… ばれずに最後まで演じることができるのか、不安になる私がいる。
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