第六章

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向かい合って食事がスタート。 いただきますの後、仁さんがお蕎麦を食べ始める。 味はどうだろうか? 美味しいと思ってもらえるだろうか? どう評価されるのかが気になる私は、お箸を持ったまま仁さんを見つめる。 「なかなかいい味だね。出汁もきいてるし」 初めて作ったお蕎麦だけど、褒めてもらった。 作るのは初心者。 だけど、商品開発部で鍛えられただけあって、味覚の方には自信がある。 味をみながら調味料などを調整しただけのことはあるかもしれない。 美味しそうに食べてる仁さんの姿を見ていると、 喜んで食べてくれる人がいると、料理を作るのも楽しいな… なんてことを思いながら、私もお蕎麦を食べ始める。 黙々とお蕎麦を食べてたら、 「明日は、出かける予定とかあるのか?」 仁さんが話しかけてきた。 「出かける予定は何もないですけど」 「正月だけど、実家には帰らなくて大丈夫なのか?」 「えっ?あっ…」 実家と言われて思い出した。 家には姉の友達が今日からお泊り。 その友達の中には創さんも間違いなくいる。 「…親も温泉旅行に出かけてていないので、帰らなくても大丈夫です」 お正月に家に帰ったら、またクリスマスのあの時みたいに会ってしまう。 嫌なことを思い出して気持ちが沈みかけた私に、 「予定がないなら、俺と初詣に行くか?明日は俺も一日休みだし」 仁さんからの思いがけないお誘い。 今年は一人で過ごすお正月だとそう思っていた。 そんな私にとっては、初詣に一緒に行ってくれる人がいるってだけで、テンションが上がっていく。 「行きます!一緒に行きます!」 私はなんの躊躇いもなくそう返事していた。
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