第七章

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あれこれ考えているうちに、繋いでいる手への意識が薄れる。 緊張も和らぎ、周りを見る余裕もでてきた。 キョロキョロ周りを見回す。 とにかく人が多い。 家族連れやカップル、友達同士などなど。 周りを観察しながら視線を左から右斜め前方へと移動した瞬間、 えっ… 嘘っ… 見慣れた顔、数名を発見。 参拝を終えて帰る人達の中に、姉の菜摘と創さんと姉の友人達がいる。 私の視線はそこに釘付けになり、違う緊張が走る。 とにかく隠れなきゃ! 姉達に見つかりたくない私は、仁さんの陰に隠れ俯く。 列の一番右端に並んでいるから、見つかる可能性がある。 どうしよう… 予想もしていない状況に、心臓がバクバクいっている。 落ち着かない私に気付いたのか? 「なに?どうした?」 仁さんが話しかけてくる。 「えっ、あっ…いやあのっ…」 なんて言えばいいのだろうかと思いながらも、仁さんの陰に隠れる。 その努力も虚しく、 「黒瀬さん?」 仁さんが姉の菜摘に見つかった。 そして、 「あっ、菜々」 続いて私も見つかってしまった。
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